民主的に衆愚政治を防ぐ方法: 賭け市場 & Surprisingly popular vote方式

 日本はコロナで緊急事態宣言を延長である。民意なので仕方ない。

こういった集団パニック状態を抜け出す方法がないかを考えていた。

  • 独裁政治
    • ベラルーシ等は独裁者がコロナに特別な対応は不要と言い切って、普通に生活しているらしい。コロナの死亡率が欧州ではかなり低く、コロナの数字が疑われているが、医療崩壊も起きておらず、 実際に大した被害は出ていないもよう。BCGの高接種国である。
    • 民主主義者の価値観とは合わないし、独裁体制を採用するのは長期的にはよくない結果をもたらす可能性が高いため実利的にも受け入れがたい
  • IQが高い人等の意見・投票優先
    • これは一見よさそうだが、案外そうでもないことがわかっている。ある認知クイズ3問を、数学や統計に強い人が最も集まっていると思われるMITで行ったら、不正解率が半分であった。同じ認知クイズを人口一般に行うと不正解率は8割であった*。半分は8割よりはマシだが、多数決で決めていたら、高IQの人が投票していても間違うということだ。
      * Shane Frederick, "Cognitive Reflection and Decision Making" JOURNAL OF ECONOMIC PERSPECTIVES, VOL. 19, NO. 4 (2005)
      https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/089533005775196732
    • (コロナパニックの春時点で少なくない理工系を含む大学教授が「自粛しろー!!!西浦先生が正しい!!」と吠えていたので、IQが高い人を優先してもパニックから脱却できないのは実感する。西浦氏もIQ少しは高い方だろうし。)
うーん、いい方法がない。民主主義のバグとして受け入れるしかないのだろうか?

ビジネス・投資で生きてきている者として一番良いと考えるのは「賭けさせる」ことである。自腹のお金を賭けさせると、人はパニックやバイアスから抜け出しやすくなる。
コロナ死亡数予測市場というのがあったら、日本のコロナ死亡数予測は2020年3月中頃をピーク減少していて、それを見ながら人々の不安は低下していたかもしれない。西浦氏が4月に42万人死亡予想を出す頃は、市場予測値が数千~2万人になっていて、「西浦氏、何を馬鹿な予測出しているの?」と冷めた空気でパニックにならなかったかもしれない。

しかし、予測ではない政策判断の場合、賭け市場が成立しない。政策判断でパニックから抜け出す民主的な方法はないのだろうか?

と思っていたときに、面白い方法に出会った。"Surprisingly popular vote" (仮訳: 隠れ人気を探せ投票)という投票方法である。日本語での説明が見当たらないので、英語Wikipediaのリンクを載せておく。

    Surprisingly popular vote
簡単に説明しよう。「(A) あなたはどう考えるか?」と合わせて「(B) 多くの人はどう考えると思うか?」を聞き、そのギャップ(C)から良い選択肢を判断する方法である。

コロナの「緊急事態宣言を延長すべきか?」を例に考えてみよう。
「(A) あなたはどう考えるか?」「(B) 多くの人(世間)はどう考えると思うか?」の投票結果が以下のようになったとしよう(現実もこれぐらいではないだろうか)。
  • (A) あなたはどう考えるか?
    • 延長すべき 65%
    • 延長すべきではない 35%
  • (B) 多くの人(世間)はどう考えると思うか?
    • 延長すべき 80%
    • 延長すべきではない 20%
次にやることは、ギャップの(A) - (B)を出す。
  • (C) (A) あなたはどう考えるか? ー (B) 多くの人(世間)はどう考えると思うか?
    • 延長すべき 65% - 80% = -15%
    • 延長すべきではない 35% - 20% = +15%
Surprisingly popular vote方式では、(C) が最大な選択肢が良い選択肢と考えられる。「自分は◯◯と考えるけど、世の中の多くの人(世間)は●●と考えるだろう」と考えている人が、冷静かつ情報量が多く適切な判断をできる可能性が高いというわけだ。世間の集団心理から独立に判断できている人の意思決定の質が高いということだ。

第二次大戦前に「日本は米国と戦争すべきか?」という質問で同じ投票を行っていたら、どのような結果が出ただろう?想像するに以下のような結果が出たのではないだろうか?
  • (A) あなたはどう考えるか?
    • 米国と戦争すべき 75%
    • 米国と戦争すべきでない 25%
  • (B) 多くの人はどう考えると思うか?
    • 米国と戦争すべき 95%
    • 米国と戦争すべきではない 5%
  • (C) (A) あなたはどう考えるか? ー (B) 多くの人はどう考えると思うか?
    • 米国と戦争すべき 75% - 95% = -20%
    • 米国と戦争すべきではない 25% - 5% = +20%
Surprisingly popular vote方式も、この投票方式で意思決定すると事前にアナウンスしてしまうと、この方式をハックする人々が出てきてしまうだろう。Surprisingly popular vote方式だけで意思決定はしないが、(C)の結果が(A)の結果と逆の場合には(A)の決定を無効とする、という条項がよいかもしれない。

コロナで痛感したが、パニック状態となった集団は制御不能である。このSurprisingly popular vote方式(仮訳:隠れ人気を探せ投票)は、民主的に衆愚政治を防ぐ方法として有効かもしれない。

今なら「日本人は新ワクチンを接種すべきか?」をSurprisingly popular vote方式でアンケート取ってみると面白いだろう。












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