ブロックチェーンの金融・決済システムへの適用を理解するための良書: 『アフター・ビットコイン: 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』 中島 真志 (著)
Braveというブラウザの会社の仕事をしているのだが、金融業界で働いた経験があるメンバーが自分しかいないため、Braveの独自仮想通貨BATまわりの業務が自分の担当となった。 仮想通貨交換所や金融当局と話しているうちに、金融・決済システム×ブロックチェーンについても興味が湧き始め、読んでみたのがこの本。 著者の中島 真志氏は、元日本銀行マンで経済学博士・教授であり、決済システムに関する第一人者である。中島 真志氏による『決済システムのすべて』『証券決済システムのすべて』『SWIFTのすべて』は、「すべて3部作」とも呼ばれ、決済業界では必読の書らしい。 このようなバリバリの決済システムの第一人者が書いているので、決済システムの深いところまでわかったうえでブロックチェーンの影響を考察してある良書である。巷のブロックチェーン本は、ブロックチェーンの技術概要を説明して、これを金融・決済システムに適用するとこんないいことがある!で終わっているが、この本はブロックチェーンでできること・できないこと・派生する問題などが、素人にもわかりやすく書かれている、 2019年後半〜2020年初頭のここ最近は、中央銀行によるデジタル通貨のニュースがよく流れているが、FacebookのLibraのような一般消費者での利用しかイメージしておらず、せいぜい中央銀行による通貨発行益・権が民間に奪われるぐらいしかイメージしていなかった。 しかし、この本を読んで、デジタル通貨にマイナス金利を付けることも可能で、中央銀行の大きな政策的ツール・武器になる可能性があることを知った。そして、中央銀行と金融機関の間での証券決済システムには「ファイナリティ」「証券と資金の同時決済=DVP(Delivery versus Payment)決済」という要件が必要で、それを分散型台帳ネットワークで解決するには中央銀行がデジタル通貨を発行するのが一番という洞察もあることを知った。後者は、決済システムの第一人者だから持てる洞察だろう。ちなみにこの本は2017年10月に出版されていて、その時点で著者はすでに色々見通せていたようである。(さらにちなみに2017年10月というのは、ビットコインの価格が猛烈に上昇していた時期であるが、この本はそのバブル崩壊を予想していた。) 金融・決済システムへのブロック