IQが高い人ほどprior beliefのバイアスに囚われる:銃規制、コロナ論争、新ワクチン
自分の中では医学問題としてのコロナはだいぶ前に終わっている。2020年夏頃までは医学論文を読み漁っていたが、もう滅多に読まない。
一方で、コロナという社会問題、意見の対立はなかなか収束しそうにない。恐怖に脳がハックされたことが原因で、恐怖症から目が覚めれば対立は収まっていくと思っていたが(徐々にそうなりつつあるとは感じているが)、恐怖症でなくなった人たちも案外スタンスを変えない。しかも、多くの普通の生活者よりもIQが高い人たちの方がスタンスを変えない傾向が強いように見受けられる。コロナ問題で最近興味あるのは、こういった傾向である。
『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』
@nana7770214 さんから教えて頂いた本を読んでみた。
同じような認知心理学的観点からの啓蒙書が最近、欧米から複数発刊されていますね。
— NANA@omegazeus (@nana7770214) December 17, 2020
>賢い人ほど不都合なデータに対して「反論」を想起するのが容易なため自らの意見にこだわりやすい
>脳科学的には事前の自分の意見にそぐわないデータを「シャットオフ」する機構があるhttps://t.co/V38wBdgS38
この本には面白い捉え方・情報が満載なので、社会の対立・二極化に興味がある方にはおすすめだ。
本の中で紹介されていた↓の実験論文を読んでみたが、大変面白いので、以下簡単に紹介したい。
Motivated Numeracy and Enlightened Self-Government
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2319992
新スキンケア製品の効果の解釈の正解は、数的処理能力と比例
新スキンケア製品を使った人・使わなかった人の肌荒れが良くなったか・悪くなったかの人数の表を見せて、「新スキンケア製品を使うと、肌荒れは良くなりそうですか?悪くなりそうですか?」というシンプルな質問をする。
その結果はこちら。算数・数的処理能力と正解率が比例している。当然の結果。
新スキンケア製品の設問と同じ数字なのに、銃規制の効果の設問になると、prior beliefに合う設問への正解率が高く、合わない設問への正解率が低くなる
- 新スキンケア製品の設問では、民主党支持も共和党支持も差がほぼなく、数的処理能力が高い人の方が正解率が高い
- 銃規制の設問になると民主党支持か共和党支持かで回答(解釈)が大きく異なる
- 民主党支持者は、「銃規制の導入で犯罪が減った」が正解の設問への正解率が高く、「銃規制の導入で犯罪が増えた」が正解の設問への正解率が低い
- 共和党支持者は、「銃規制の導入で犯罪が増えた」が正解の設問への正解率が高く、「銃規制の導入で犯罪が減った」が正解の設問への正解率が低い
- 驚くことに、数的処理能力が高いグループの方が、その傾向(prior beliefによるバイアス)が強まる
新ワクチンの有害事象の数字も、prior beliefによって逆の反応を引き起こしている
新ワクの安全度相対化
— J Sato (@j_sato) January 31, 2021
・米国全ワクチンでの重篤な副反応は100万件あたり1~10件で、それを死亡23.8件で超え😢
・車に乗るより安全だが、飛行機に乗るよりは危険
年代別重篤な副反応データ待ちだが、死亡で仮判断すると接種メリットあるのは
・米国:30・40代~
・日本:IFRで50代~、PFRで80代以上😅 pic.twitter.com/wHkRGT4bKO
- 科学的な人はワクチンをするものだ派: 有害事象は因果関係不明で、この数字では何も分からない。この数字を出して判断するのは非科学的だ!
- 反ワクチン派: 殺人ワクチンだー!
- インフルワクチンよりも数十倍有害事象が多くて、ワクチンとしての安全性がインフルワクチンより悪い可能性が高そう(通常時のワクチンの安全基準として許容範囲かは別として、それでも車に乗るより安全だ)。
- 一方、天然コロナは、日本人にとって米国人と比べると、同年代だと100分の1のリスク・人口死亡率である
- 1と2から、ワクチンとしてのリスク・リターンが日本人にとってはインフルワクチンよりも大幅に悪い可能性が高い。(中期的な不確実性を除いて)安全そうだが、飛行機事故を防止するために飛行機に乗る、のような不思議なリスク行動になりそうである。中年以上の米国人にとっては天然コロナのリスクがインフルより大幅に高いので、リスク・リターンが適切である可能性が高い。また年代別にも相対リスクは大きく異なる。
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