IQが高い人ほどprior beliefのバイアスに囚われる:銃規制、コロナ論争、新ワクチン

自分の中では医学問題としてのコロナはだいぶ前に終わっている。2020年夏頃までは医学論文を読み漁っていたが、もう滅多に読まない。

一方で、コロナという社会問題、意見の対立はなかなか収束しそうにない。恐怖に脳がハックされたことが原因で、恐怖症から目が覚めれば対立は収まっていくと思っていたが(徐々にそうなりつつあるとは感じているが)、恐怖症でなくなった人たちも案外スタンスを変えない。しかも、多くの普通の生活者よりもIQが高い人たちの方がスタンスを変えない傾向が強いように見受けられる。コロナ問題で最近興味あるのは、こういった傾向である。

事実はなぜ人の意見を変えられないのか

@nana7770214 さんから教えて頂いたを読んでみた。

この本には面白い捉え方・情報が満載なので、社会の対立・二極化に興味がある方にはおすすめだ。

本の中で紹介されていた↓の実験論文を読んでみたが、大変面白いので、以下簡単に紹介したい。

Motivated Numeracy and Enlightened Self-Government
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2319992

新スキンケア製品の効果の解釈の正解は、数的処理能力と比例

新スキンケア製品を使った人・使わなかった人の肌荒れが良くなったか・悪くなったかの人数の表を見せて、「新スキンケア製品を使うと、肌荒れは良くなりそうですか?悪くなりそうですか?」というシンプルな質問をする。

その結果はこちら。算数・数的処理能力と正解率が比例している。当然の結果。


新スキンケア製品の設問と同じ数字なのに、銃規制の効果の設問になると、prior beliefに合う設問への正解率が高く、合わない設問への正解率が低くなる


この実験が面白いのは、この先だ。表の数字はそのままに、「新スキンケア製品」を「街中での銃の保持の禁止」に置き換え、「肌荒れが悪くなった/良くなった」を「犯罪が増えた/減った」に置き換えた質問を行う。
そして、回答者が民主党支持か共和党支持かを聞いおく。なお、民主党支持か共和党支持かによる数的処理能力の分布が異ならないことも確認してある。

新スキンケア製品の設問と銃規制の設問はまったく同じ数字なのに、驚くほど回答に違いが出たのが以下図である。


  • 新スキンケア製品の設問では、民主党支持も共和党支持も差がほぼなく、数的処理能力が高い人の方が正解率が高い
  • 銃規制の設問になると民主党支持か共和党支持かで回答(解釈)が大きく異なる
    • 民主党支持者は、「銃規制の導入で犯罪が減った」が正解の設問への正解率が高く、「銃規制の導入で犯罪が増えた」が正解の設問への正解率が低い
    • 共和党支持者は、「銃規制の導入で犯罪が増えた」が正解の設問への正解率が高く、「銃規制の導入で犯罪が減った」が正解の設問への正解率が低い
    • 驚くことに、数的処理能力が高いグループの方が、その傾向(prior beliefによるバイアス)が強まる

コロナ問題での分断は、この実験結果と相似に見える。普通に生活をしている人たちの間では恐怖症が減るとともに分断は弱まって、コロナ以外の自分のことに優先度を置いた生活が進んでいる印象である。一方で、インテリ層の間では相変わらずコロナ論争が続いている。IQが高い故に、prior beliefに合う解釈をし、合わない情報には違う角度の反論をすることで、prior beliefが強化されていく。GoToトラベルの西浦論文などはその典型だろう。クオリティは低いが。

新ワクチンの有害事象の数字も、prior beliefによって逆の反応を引き起こしている

最近だと、新ワクチンの有害事象の数字もprior beliefによって逆の反応を引き起こしていて興味深い。
「科学的な人はワクチンをするものだ派」と「反ワクチン派」からはそれぞれ以下の反応である。
  • 科学的な人はワクチンをするものだ派: 有害事象は因果関係不明で、この数字では何も分からない。この数字を出して判断するのは非科学的だ!
  • 反ワクチン派: 殺人ワクチンだー!
自分は「科学的な人はワクチンをするものだ派」だが、確率を観察する。
  1. インフルワクチンよりも数十倍有害事象が多くて、ワクチンとしての安全性がインフルワクチンより悪い可能性が高そう(通常時のワクチンの安全基準として許容範囲かは別として、それでも車に乗るより安全だ)。
  2. 一方、天然コロナは、日本人にとって米国人と比べると、同年代だと100分の1のリスク・人口死亡率である
  3. 1と2から、ワクチンとしてのリスク・リターンが日本人にとってはインフルワクチンよりも大幅に悪い可能性が高い。(中期的な不確実性を除いて)安全そうだが、飛行機事故を防止するために飛行機に乗る、のような不思議なリスク行動になりそうである。中年以上の米国人にとっては天然コロナのリスクがインフルより大幅に高いので、リスク・リターンが適切である可能性が高い。また年代別にも相対リスクは大きく異なる。
と淡々と、今見えている数字から一番ありえそうな確率事象を推測しているのだが、「因果関係不明な数字から判断するなど非科学的だ!」と「科学的な人はワクチンをするものだ派」から糾弾される。

もう一度、銃規制の効果の設問への正解率分布を見て欲しい。銃規制の効果の設問では、prior beliefに合う設問への正解率が高く、合わない設問への正解率が低かった。そして、その傾向はIQが高いグループで大きくなり、IQが高いほどprior beliefのバイアスに囚われやすいことを示している。これと同じ現象が新ワクチンで発生していないだろうか?

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