ダイヤモンド・プリンセス号とBCG接種の分析の査読前論文をレビューする

以下の査読前論文がアップされた。

The effect of BCG vaccination on COVID-19 examined by a statistical approach: no positive results from the Diamond Princess and cross-national differences previously reported by world-wide comparisons are flawed in several ways
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.17.20068601v1.full.pdf+html



ダイヤモンド・プリンセス号は密室サンプルとして分析したいと以前思ったが、自分がみたときは分析に必要な情報が揃っていなかったので見送っていた。分析が出てきたので大変興味深い。
(なお、DP号以外の国レベル比較は特に興味深い情報なさそうだったので読んでいない。タイミングの違い説は聞き飽きたので、ベルリン市内の旧東西地域での死亡率の違いを説明して欲しい。)

ダイヤモンド・プリンセス号の部分についてざっと目を通したが、結論としては使えるレベルの分析ではなく、BCG仮説を棄却するものではない。以下4つの理由を述べる。

  1. 乗客の年齢要素が入っていない分析は、死亡率の分析としては不適切・無意味
  2. 若い乗員の人数・国籍を考えると、日本人以外Othersの死亡率が低いのは当然
  3. 米国の乗員数、感染者数、死者数が怪しい可能性
  4. BCG接種していても、ダイヤモンド・プリンセス号は三密空間にいると感染することの現れ
それぞれ少し詳しく説明する。

1. 乗客の年齢要素が入っていない分析は、死亡率の分析としては不適切・無意味

ご存知の通り、COVID-19の死者は高齢者に著しく偏る。死亡率の最大因子が年齢なので、乗客の年齢情報なく横比較するのはほぼ無意味である。

自分が分析しようとしたときは乗客の年齢×国籍が見当たらなかったので分析を見送っていたのだが、この査読前論文は年齢を考慮せずに分析している時点で正直読むに値しない。

なお、この査読前論文がソースから感染者の国籍×年齢情報を↓に見つけたが、そこから推測するに乗客の高齢者の中での日本人割合が高い。
https://www.mhlw.go.jp/content/000598727.pdf *

2. 若い乗員の人数・国籍を考えると、日本人以外Othersの死亡率が低いのは当然

上記1.とも関係するが、3,711名のうち1,045名(28%)**は若い乗員(The median age of the crew was 36 while the median age of the passengers was 69.***)であり、そのうち7割以上がフィリピン、インド、インドネシア出身****。日本人乗員の数・割合は不明だが、感染者の国籍×年齢情報 https://www.mhlw.go.jp/content/000598727.pdf から推測するに日本人乗員は非常に少ないと思われる。つまり日本人の間では若者はほとんどいなくて、高齢者ばかりであったと推測される。

公開されている感染者の年齢×国籍から、参考までにそれを日本人と日本人以外に分けて人数をチャートにしてみた。なお、繰り返しだが、本来は分母となる乗員・乗客の年齢×国籍をみるべきである。



この情報を踏まえて、本査読前論文に出ている↓の表を見て欲しい。Othersのうち1,000名前後は元気な船乗りである。日本人は高齢者ばかりであった可能性が高い。年齢構成を反映している当たり前の結果にしか見えない。




本査読前論文でも乗員の人数が多いことは触れられているが、そこを考慮しないのはクリティカルなミスである。

もう一つ本査読前論文でも触れられているが、香港から日本へのクルーズ船と考えると、西欧、米国、豪州等から来ている高齢者は持病のない元気な高齢者に限られるのに対して、香港や日本からは体に若干の不安を持つ高齢者も乗船している可能性がある。COVID-19の致死率が持病持ちで非常に高いことを考えると、これも死亡者数には影響があるだろう。この分析は死者数が1−3名変わるだけで結果が変わるサイズである。ミクロな分析するならここまで見ないと。


ちなみに、シンガポールの感染者数でシンガポール人1,174人と並ぶ感染者数1,055人はバングラディシュ人であるが、死亡者0人である。バングラディシュはBCG Tokyo接種国だが、自分はこれをもってBCG Tokyoの効果ありとは言わない。年齢が最大因子だからだ。
https://twitter.com/j_sato/status/1251078301524754434


3. 米国の乗船者数、感染者数、死者数が怪しい可能性 (4月24日追記)

本査読論文に出ている米国の乗員数、感染者数、死者数が怪しい可能性がある。

米国CDCのサイトにはダイヤモンド・プリンセス号について以下の記述がある。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6912e3.htm

As of March 13, among 428 U.S. passengers and crew, 107 (25.0%) had positive test results for COVID-19; 11 U.S. passengers remain hospitalized in Japan (median age = 75 years), including seven in serious condition (median age = 76 years).

乗船者数、感染者数が本査読前論文の表の数字と異なり、3月13日時点で7名が重症化である。COVID-19は70代で重症化すると半分ぐらいが亡くなることを考えると、3名前後が亡くなっていてもおかしくない。ただ、持病なしの健康な高齢者で全員重症化から生還したのかもしれない。いずれにせよ、本査読前論文の表の米国の死者0名をそのまま捉えるのは危険な数字の読み方である。

(4月26日追記)
参考までだが、ダイヤモンド・プリンセス号とほぼ同じ規模の乗客・乗員数で、同じように船内アウトブレイクが起きて、シドニー港に着いたルビー・プリンセス号は、感染数852名で、死亡数21名である。ダイヤモンド・プリンセス号の14名より死亡者数が多い。詳しいデータはなさそうだが、乗員はダイヤモンド・プリンセス号と同じような年齢構成で、乗客についてはオーストラリアとニュージーランド人が多数を占め、乗客の高齢者割合はダイヤモンド・プリンセス号より低いと推測される。
https://en.wikipedia.org/wiki/2020_coronavirus_pandemic_on_cruise_ships#Ruby_Princess


4. BCG接種していても、ダイヤモンド・プリンセス号は三密空間にいると感染することの現れ

BCGは自然免疫・訓練免疫を強化するものであって、獲得免疫ではない。BCGを接種しているとSARS-CoV-2への抗体があるわけではない。ウィルスへの曝露量次第では感染するし、死亡する。韓国の新興宗教での局所的な感染爆発はその現れであり、ダイヤモンド・プリンセス号もその一例である。BCG接種していても三密・濃厚接触したら感染する。


* 国籍インドの行が2つある。
** 本査読前論文では1,200名、Wikipediaでは1,045名。
*** https://en.wikipedia.org/wiki/2020_coronavirus_pandemic_on_Diamond_Princess
**** https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/02/post-92490.php

Moriarty LF, Plucinski MM, Marston BJ, et al. Public Health Responses to COVID-19 Outbreaks on Cruise Ships — Worldwide, February–March 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2020;69:347-352. DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6912e3

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