日本人が現代英米式・他アジア式の子育ての考え方と作法を理解するための良書: 『世界標準の子育て』 船津 徹 (著)

 日本人が現代英米式・他アジア式の子育ての考え方と作法を理解するための良書だと思う。厳密さにうるさい方々からは「欧米ってどこ?」「世界標準って何?」「ドイツだと○○だよ」「この主張の根拠は?」という突っ込みがたくさん入りそうな内容であるが、英語圏のオーストラリアで子育てしている日本人としては参考になる書籍であった。

 
 アクティブ・ラーニングで有名なフィンランドが1980年代以前は日本と同じ知識の詰め込み授業と「○×式テスト」による評価をしていたと聞くと、やはり日本の学校教育は硬直的で時代への適応が遅すぎると思わざるを得ない。
 1馬力での稼ぎ手でありながら子育てもがんばらないといけないという2つを課せられた過度期の日本人男性として無理ない範囲でがんばりたい。



以下は抜粋・要約メモ。

子育てで伸ばすべき3つの要素は「自信」「考える力」「コミュニケーション力」
「世界標準の子育て」とは、つまりどんな能力を伸ばす子育てなのか?端的に必要な要素は3つであり、「自信」「考える力」「コミュニケーション力」です。
子育ての3つの条件で、もっとも大切なものが「自信」
子育ての3つの条件で、もっとも大切なものが「自信」です。子どもの「自信」を強くすることができれば、子育ては90%成功したといっても過言ではありません。 
自信の源泉は、子どもが自分の意思でものごとに取り組んだ時に「自分の力でできた!」という成功体験にもとづいて生まれるものです。
これからの競争社会を生きる子どもは「自意識過剰」くらいでちょうどいい。
 欧米社会では子どもを大人扱いして自立心を育てることが最優先
個人主義が浸透している欧米社会では、幼い子どもでも「一人の人格者」として扱います。子どもの個性と意思を尊重し、一人前に扱い、「自立心」を育てることが子育ての最優先項目なのです。 
アメリカ人の子育ては「自立心を育てる」目的が根底にあります。だから子どもを褒める時は「一人でできてすごいね!」「人の手を借りないでできたね!」という「自立への賞賛」の気持ちが込められているのです。アメリカ人は「自分の意思で行動できた→褒める=自立を促す」なのです。 
子どもが公共の場所で騒いだりすれば、親は即座に子どもをその場から連れ出し、毅然とした態度で行動を非難します。人前で叱らないのは子どものプライドをつぶさないための配慮です。 
大人同士が話をするように子どもと会話をしましょう。 
韓国は米国トップ大学への入学が日本よりも多いが、学力以外のメンタル が弱い子どもが多く44%がドロップアウト
少し前まではソウル大学や高麗大学といった韓国のトップ大学に入れることが目標でした。ところがグローバル化の進行によって韓国のトップ大学の地位(価値)が揺らいでしまったのです。2000年以降、韓国企業のグローバル化が急速に進行し、韓国のトップ大学を出ても、英語ができなければ大企業に就職できない、という事態に陥りました。これが韓国の教育ママたちの目を一斉に海外に向けさせたのです。そして韓国は、ハーバード、スタンフォード、イェールなどの全米トップ大学への合格者数もアジアでトップクラスになりました。ハーバード大学に通っている韓国人学生は298人(2014年度)で、中国に次ぐ大きな数字です。日本人のハーバード生は78人で、台湾の80人よりも少ない。
ハーバード大学、イェール大学など、アメリカのトップ大学に通う韓国人学生のうち44%がドロップアウトしてしまいました。レベルの高い教育も大切なことですが、何よりもベースとなる心を育てておかなければ、いつか経験する挫折に耐えられないのです。
中国では子育ては祖父母の仕事
中国では、「子育ては祖父母の仕事」です。子育てに手を貸すだけでなく、教育費も祖父母が分担してくれる場合がほとんどです。その間、働き盛りの両親は共働きをして住宅ローンや生活費を稼ぐ。日常の家事や子どもの世話は祖父母に任せ、両親は週末だけ子育てに参加する、というのが中国の典型的な子育てスタイルです。
 インドの理数系頭脳を支えているのは暗記ではなく、いかに工夫して暗算するかの思考習慣
インド政府が2008年に発表したデータによると、NASAで働く科学者の36%がインド人。マイクロソフト社職員の34%がインド人。アメリカの医師の38%がインド人。英国の医師の40%がインド人だそうです。今やシリコンバレー市民の4人に1人はインド人と言われています。
インドは伝統的に頭脳労働者が尊敬される社会です。職業序列は1) エンジニア 2) 医師 3) 科学者 4) 経済(ファイナンス) と理数系で占められています。
インド人の理数系頭脳を支えているのは「暗記」ではなく、「いかに工夫して暗算するか」という「思考習慣」であることです。機械的に公式を暗記するのではなく、「How?/どうしたら?」という頭の使い方を身につけさせることが「理数系頭脳」の土台となっているのです。
アジアは偏差値主義、欧米は総合力主義
日本、中国、韓国と儒教の影響を受けたアジア諸国の子育てに共通するのが「偏差値主義」です。これは「ハードスキル偏重」と言い換えることもできます。アジアの子どもの大部分に共通するのは「ガリ勉で内弁慶」タイプだということです。 
兄弟姉妹は平等に育てる必要なく、上の子中心に育てる
兄弟姉妹は平等に育てる必要はありません。上の子を中心に育ててあげてください。特に「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだからがまんしなさい」は、絶対に使ってはいけないNGワードです。下の子は生まれた時から上の子がおり、「親の愛情は100%独り占めできないもの」「愛情は兄弟姉妹分け合うもの」という前提で生まれてくるので、下の子は少々愛情不足になっても問題がないのです。
勉強ができるかどうかは能力よりも学習態度・習慣。それは家庭で身につく。
勉強ができる子に共通する資質は、能力ではなくて態度。あきらめない、自制心がある、人の話を聞ける、柔軟に思考できる、正確さを追求する、チャレンジを恐れない。
学習態度を決定するのは6歳までの習慣づくり。小学校に上がる前までに、本を読み聞かせする、プリント学習に取り組ませる、読書活動をさせる、時事問題を話し合う、新聞記事を読み合うなど、子どもと密にコミュニケーションを取りながら学習習慣を確立することです。 
7歳〜 「根拠のある自信」を育てるのは、継続と競争
 親からの愛情によって「根拠のない自信」を身につけてもらったあと、小学校に入学をする7歳からの子どもには「根拠のある自信育て」に取り組む時期です。 
「根拠のある自信」は親から受け取るものではなく、子どもが自分の努力によって獲得していく能動的なものです。「根拠のある自信」は、継続と競争によって育てられます。 
このステージからは父親の子どもへの働きかけがポイントです。子どもの能力、才能の芽を見つけて大きく伸ばす適任者は父親です。
男の子はおだてる、女の子は手本を示す。けなさない。
男の子はおだてて育てる。女の子は手本(型)を示して育てる。
男の子へのNGワードは、自尊心を傷つける言葉、ケナシ言葉、比較言葉。
冗談でも人前で「ウチの子バカだから」「この子はダメだから」「どうせ言ってもわからないから」などと絶対に言ってはいけません。特に母親の「ケナシ言葉」は子どもの心にグサッと突き刺さります。 
特に幼い子どもに使う言葉は慎重に選んでください。親の何気ない一言が子どもの一生のコンプレックスになることもあるのです。 
欧米社会では身内への悪口は御法度であり、身内を悪く言う人は、ひるがえれば自分の恥や価値観の狭さを世間にさらしているようなものなのです。 
「言葉の力」(→想像力・イメージ化力)を育てる
「考える力」の土台となるのは「言葉の力」です。言葉を扱う力が弱ければ、思考もそれなりにしか育ちません。
6歳までに本好きな子どもに育てることができれば、子どもの言語教育はほぼ成功。
親が絵本を読んであげると、子どもは想像力を働かせます。ストーリーを頭の中で具現化して、映画を見ているようにイメージの世界を楽しめるようになるのです。このイメージ化の訓練が足りないと、読解力が弱い子どもになってしまいます。 
コミュニケーション力は自然に育つものではなく、礼儀作法と同じで教えて身につけるスキル。習い事で集団で行なう活動を採り入れる、演劇・ディベートは最高。
世界的に見ると、アジア人の子どもはコミュニケーションが苦手。その理由は、アジア人の多くが「コミュニケーション力は自然に育つ」と思い込んでいるからです。笑顔で挨拶する、目を見て話す、人の話をちゃんと効く、感情表現をする、自分の考えを明確に伝えるなど、これらは礼儀作法と同じで、教えなければ身につかない「スキル」です。
日本人は子どもの習い事に、水泳、バレエ、ピアノなど、個人競技や一人で練習するものを選ぶ傾向があります。もちろん、「自信をつけるための習い事」としてはいいのですが、コミュニケーション力を伸ばすことを考えたら、「集団で行なう活動」に参加させてください。 
 演劇はコミュニケーション能力、言語力を伸ばす最高のツール。イギリスでは必修科目にもなっている「演劇」。人前で堂々と話す技術、表情、身振り手振りを使って意思疎通する方法、相手に伝わりやすい発生・発音の方法、相手に親しみを与える話術など、コミュニケーションスキルのすべてが演劇を通じて身につく。
グローバル感覚とは…
グローバル感覚とは、国籍、文化、価値観、宗教の違いなどにかかわらず、あらゆつ人々がお互いを尊重し合う、多様性を尊重する意識であり、態度です。
笑顔、挨拶について
世界では、笑顔は「自分は危ない人ではありません」というアピールであり、コミュニケーションの基本です。
「挨拶しなさい!」と強制されても、子どもは「なんで知らない人に挨拶しなきゃいけないの?」と思います。そこで、「笑顔で挨拶すると自分も相手も楽しい気分になるよ!」と挨拶の意味を子どもに教えます。そして、親子で「笑顔で挨拶」を練習するのです。 
ゲームとの付き合い方
各家庭で必ずルールを決めてください。親が一方的に決めてはいけません。「親子会議」で話し合います。同時に、ルールを守らなかった時の罰則も決めましょう。ルールをプリントアウトして、子どもにサインさせます。
ルール1) ゲームは宿題・課題が終わってからでなければ禁止
ルール2) ゲームは1回につき1時間まで。1日最大2時間まで
ルール3) 違反した場合、ゲームは1週間禁止。スマホは取り上げ   
欧米のティーンエイジャー の扱い方
欧米の親がティーンエイジャーによく言う言葉が"Get out of comfort zone"です。
欧米では子どもがティーンエイジャーになると"Keep kids busy"を心がけます。部活、塾、趣味、ボランティア、アルバイトなど、多くの活動に参加させて、多様な人付き合いをしているとイライラが分散するのです。
また、もう一つの対策として「タイムマネジメント/時間管理」を教えてください。自分のスケジュールを自分で管理できるように導くのです。  
欧米のティーンエイジャーは、男の子であれば、女の子であれ、夏休みになると「サマーキャンプ」に参加します(というよりも、強制されます)。 
父親はティーンエイジャーの子どもの「強み」を見つけて社会での活用イメージを教えてあげる
 父親が子どもの「強み」を見つけ、それが社会のどんな分野で活用できるのかを教えてあげれば、子どもは自分の強みに自信を持つことができます。社交性が高い子どもであれば、「社会ではコミュニケーション力は大きな武器になるよ。仕事がうまくいく人、出世する人は人間関係の構築がうまい人なんだ」と教えてあげてください。さらに、コミュニケーション力を高めるために「ディベートや演劇を経験してみるといいよ」とアドバイスしてあげるのです。
各国・地域の教育関連の小ネタ
ベネッセコーポレーションが日本、韓国、中国、台湾の母親に行なった「子どもに期待する将来像」という調査で「人に迷惑をかけない人になってもらいたい」と答えた割合は、日本71%、韓国24.7%、中国4.9%、台湾25%でした。  
欧米の小学校では、小学1年生になると毎日30分の読書が義務づけられます。
「シンガポールマス」と呼ばれるシンガポール式の算数カリキュラムが世界で話題。文章題を視覚化して問題を解いていく、というプログラム。
フィンランドが「考える力」の教育に力を注ぎ出したのは1980年代からで、それ以前は日本と同じ知識の詰め込み授業と「○×式テスト」による評価でした。 
日本の大学までエスカレーター式に上がれるというのは欧米では見られないシステムです。 
勉強の見直しができない。どう教えればいい?
男の子の親に非常に多い悩みです。算数の問題でケアレスミスを繰り返す。やり方がわかっているのに見直しができずにテストで悪い点をとってしまう。この問題は子ども自身が「正確さを追求するクセ」を身につけなければ解決しません。親や先生からいくら言われても子どもが自分で直そうと本気にならなければダメなのです。算数の計算でミスをしたら、ほったらかしにせず、正しい答えがわかるまでやり直しさせてください。間違った回答は消しゴムで消さないこと。間違った回答の横に正しい答えを書かせましょう。一度間違いを消してしまうと同じミスを何度も繰り返します。自分のケアレスミスを認識させるために、わざと間違った答えを残しておくのです。「正確さを追求するクセ」を身につけるには長い時間がかかります。ご両親は根気強く子どもの勉強(大切なのがミスを直す作業)に付き合ってあげてください。 

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